悪女の代役ステラの逃走。〜逃げたいのに逃げられない!〜
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「単刀直入に聞こう。ここ数週間の…いや、僕と婚約してからのリタをどう思う?」
ロイ殿下が俺の目の前の椅子に深く腰掛け、真剣な瞳でこちらを見つめる。
ロイ殿下が指名した部屋は来賓等をもてなしたり、仕事上の話をしたりする応接室だった。
そこで俺とロイ殿下は互いに向き合う形で机を挟んで椅子に座っていた。
ロイ殿下と婚約してからのリタ嬢か。
ロイ殿下の問いに俺はここ数週間のリタ嬢への印象をすぐに口にする。
「…聡明さがなくなりましたね。先ほどもありましたが、リタ嬢は口論で俺に負かされるような方ではありません。いつも俺たちは互角でした」
「なるほど…。ユリウスもそう思うか」
俺の言葉にロイ殿下が深く頷く。
この様子だど、ロイ殿下も俺と同じ印象をリタ嬢に持っていたらしい。
「君はリタと学院で1番ある意味深い関係だろう?だからリタについて君に聞いたんだ。君が言うんだから間違いないね」
納得した様子で笑うロイ殿下に俺はただ頷いた。
「しかしロイ殿下。何故このようなことを俺に確認したのですか?何かお考えが…」
「いや。婚約者として婚約者を心配することは当然だろう。リタは元々気分屋でわがままな時もあれば聡明な時もあったからね。今はその聡明さがなくなったから少し心配していただけさ」
「…そうですか」
穏やかに笑うロイ殿下は本当にリタ嬢を心配しているだけなのだろうか。
どうしても他に何か考えているのではないかとロイ殿下の思惑について考えてしまう。
そんな俺を見てロイ殿下は「本当に心配しているだけだよ。そんな目で見ないでくれ」と苦笑いを浮かべていた。