悪女の代役ステラの逃走。〜逃げたいのに逃げられない!〜
第2章 何故か逃げられない公爵邸

1.公爵一家はそれを許さない




sideステラ



ユリウスに保護されて約2ヶ月が経った。
最初こそ起きることも辛かった左脇腹の刺し傷は2ヶ月もするともう完治していた。

完治したということは当初の予定通りここから離れるタイミングが来たということだ。



「今までお世話になりました」



どうせ別れを告げるなら全員が揃うであろう夕食時がいいと考え、私はフランドル公爵夫妻とユリウスに食事中に頭を下げた。



「ど、ど、どうしたの?急に?」



私の目の前に座っている美しい水色の腰まである長い髪の40代くらいの女性、フランドル夫人が困惑した表情を浮かべてユリウスと同じ金色の瞳をこちらに向ける。
フランドル夫人はユリウスと違ってとても表情豊かで優しさが内側から滲み出ている人だ。



「そうだぞ。ステラ」



そんな夫人の横でユリウスによく似たこちらも40代くらいの男性、フランドル公爵が冷たいながらも驚いた表情を浮かべてこちらを見ていた。
公爵とユリウスの違いは瞳の色くらいで公爵の瞳の色は銀色だ。



「ユリウスと話していたんです。傷が完治するまではここで保護してもらう、と。もう傷も完治したのでそろそろここを出ようかと思いまして」



約2ヶ月前、まだユリウスに保護されて間もない頃のことを思い出す。
その時もここからすぐに出ようとしたが、その時はユリウスが「傷が完治するまでは」と言ったのでそれに従った。
だが、その傷ももう完治しているのでここを出る頃合いだ。




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