悪女の代役ステラの逃走。〜逃げたいのに逃げられない!〜
「ステラが結婚したいと言うのなら結婚すればいい。だが、その相手は俺しか許さない。ステラは結婚してもしなくてもステラ・フランドルだ」
まず最初に口を開いたのはユリウスだった。
いつもと変わらない無表情だが、その瞳は真剣そのものだ。
ユリウスのまさかの発言に私は大きく目を見開いた。
いくら私をフランドルから出したくないからといって、義理の妹と結婚しようと考えるとは。何を考えているんだ、ユリウス。
「残念だけど、君ほど素晴らしい女性に釣り合う男はこの世界中どこを探しても僕しかいない。だからステラが望もうと望ままいと僕と結婚すること決定事項だよ。それにこれはあまり使いたくないけれど皇帝として命令もできるしね」
次に口を開いたロイも随分おかしい。
甘い笑みを浮かべたまま、恐ろしいことを口にしたロイの瞳も真剣そのもので、私は言葉を失った。
ロイの考え方はもう怖い。自分の世界に入ってしまっている。
「あ、あははは」
この何故か異常に私に執着を向ける2人に対して私からつい乾いた笑い声が出る。
少し前までの私は何も持たない、何者でもない、もし誰にも知られずに死んでしまっても、誰にも悲しまれない、そんな存在だった。
だけど今の私は違う。
私を愛する両親がいて、メアリーや使用人たちもいる。
実はずっと前から私を主人だと思い、慕ってくれていたセスもいるし、何故か私に執着して、愛してくれるユリウスもいる。
それからロイも。
今の私は持ちすぎているくらいだ。