悪女の代役ステラの逃走。〜逃げたいのに逃げられない!〜




「おかしくない。お前は保護されるべき子どもだ」

「…じゃあ困っている子ども全員を保護するの?慈悲深い次期公爵様ですね?」

「俺の保護対象は宮殿で血を流していた訳ありの子どもだ」

「それは随分ピンポイントですね」

「そうだろう」



私と言い合っているユリウスはどこか楽しそうだ。
私は全く楽しくないが。
相変わらず冷たい表情のままだが、ユリウスの私を見つめる瞳はとても優しい。まるで妹を見る目だ。

そんな私たちを夫人は「何と仲の良い2人なのかしら。まるで本物の兄妹だわ」と嬉しそうに、公爵は「そうだな」と同じく無表情だが、どこか嬉しそうに見ていた。

何でこんなくだらない言い合いが仲良く見えるんだ!



「ステラはここに居ればいい」

「…」



この後何を言ってもどうせ〝ここに居ればいい〟としか言わないであろうユリウスに私はもう何も言えなくなる。

最初こそフランドル公爵夫妻やユリウスの優しさに感謝していたが、ここまで来るとその優しさが煩わしい。
思っちゃいけないことだとわかっているけれど。




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