悪女の代役ステラの逃走。〜逃げたいのに逃げられない!〜

2.逃走を試みた結果





ここから出る許可が降りないのならもう勝手に逃げ出してしまえばいい。
完治した私なら公爵邸から逃げ出すことも不可能ではないだろう。

そう考えた私は机の上に今までの感謝の気持ちをしたためた手紙を置いて、必要な荷物をまとめると、さっさと今まで生活していたこの部屋を後にした。

逃げる時間帯はあえて昼間を選んだ。
たくさんの人が活動している時間帯の方が私が1人で移動していても不自然ではないからだ。

公爵邸脱出後、まずは帝都の隣街、ユランを目指す。
ユランにある小さな銀行に実はルードヴィング伯爵に裏切られた時用の資産をこっそりステラとして作っていたからだ。
そこまで行けば300万ほどの資産があるはずだ。
それだけお金があれば遠くへ移動することも必需品を買うこともとりあえずの生活をすることもできる。

これからのことを考えながらも私は公爵邸をぐるりと囲む立派な塀のところまで辿り着いた。
ここに着くまでに何人かとすれ違ったが、誰も私がここから出ようとしていると気付く者はなかった。

あとは誰にもバレずにこの塀をよじ登って外に出ればまずは公爵邸からの脱出完了だ。



「うゔっ」



私の小さな体よりも何倍も高い塀を荷物を持ったまま登ることはとても難しい。
それでも私は諦めることなく、唸りながらも塀にあるわずかな凸凹を見つけてはそこに手や足をかけ必死で塀をよじ登り続けた。
その結果ものの数分で私は何とか塀の頂上まで辿り着いた。





< 37 / 313 >

この作品をシェア

pagetop