悪女の代役ステラの逃走。〜逃げたいのに逃げられない!〜
「それから今後はお前がこんな危ない遊びをしないように見張り役を付ける。よかったな?これでお前は安全だぞ」
「…えー」
つまりもうこの方法では逃げられないということではないか。
安易に逃げようとした結果、さらに逃げられない状況を作ってしまい、自分の軽率な行動に私は大いに反省する羽目になった。
今度はもっとちゃんと計画を練ってから脱出しなければ。まさか公爵邸から出ることがこんなにも難しいことになるなんて。
出てからが本番だというのに。
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脱走しようとしてから数日。
私は毎日誰かに監視されている。
と言っても四六時中誰かが私に張り付いているいう訳ではなく、近くにいる、といった感じだ。
部屋の外に必ず護衛騎士がいるのもそういうことだ。
前まではこんな命を狙われている重鎮みたいな扱いなんて受けていなかったのに。
…命を狙われているのは間違えないんだけど。
「昨日のユリウス様との剣術のお稽古はいかがでしたか?」
昼食を食べ終えた昼下がり。いつものようにソファでくつろぐ私にメアリーがストロベリーティーを淹れてくれる。
そして彼女はにっこりと笑いながら慣れた手つきでそれを私の目の前の机の上に置いた。