悪女の代役ステラの逃走。〜逃げたいのに逃げられない!〜





「…んー。楽しかったかな。ユリウス強いし」

「そうでしょう!そうでしょう!ユリウス様はとてもお強いんです!かっこよかったでしょう!」



昨日の剣術の稽古の感想を述べるとメアリーが本当に嬉しそうに笑う。

ユリウスは時間を見つけてはよく私に剣術の稽古をつけてくれていた。
この帝国内でユリウスの剣術の腕前を知らない者はいない。どんな先生よりも優れた能力を持っていることは間違いないので、ユリウスが剣術の稽古に現れるといつもヴィル先生からユリウスへ私の剣術の先生が変わっていた。

ユリウスが剣術の先生になる時は基本、模擬戦をしながらだ。私はただ剣を振るうだけよりも、目まぐるしく状況が変わる模擬戦の方が好きなので、ユリウスとの稽古はヴィル先生の稽古よりも好きだった。
リタの代役を務めていた時も口論の末に模擬戦にまで発展することがよくあったが、その時も実は密かにユリウスとの模擬戦を楽しんでいた。
もちろん表向きは文句しか言っていなかったが。



「ステラ様もご存じだとは思いますがユリウス様は騎士団に最年少で所属を認められた天才です!そんな方とお稽古ができるステラ様もおそらく天才ですね!」



まるで自分のことのように誇らしげにしているメアリーの姿はあまりにも愛らしく、私は思わず、ふふ、と笑ってしまう。
ユリウスだけではなく私まで褒めてくれるなんて。




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