悪女の代役ステラの逃走。〜逃げたいのに逃げられない!〜
「ありがとう、メアリー」
愛らしい笑顔で話を続けるメアリーに私は笑顔でお礼を言った。
ここに居ればみんな私を〝ステラ〟として見てくれる。
リタの代役を務めていた時はどんなに頑張ってもそれは全て〝リタ〟のものだった。
それに不満があった訳ではない。
そういうものだと特に気も留めていなかった。
だが、ここへ来て初めて自分自身が評価されて、正しく評価されることがこんなにも気持ちよく、誇らしくなれるのだと知った。
午後からの予定は確かライアス先生の授業だ。
歴史学と貴族の礼儀作法を学ぶ予定だったはず。
「メアリー、ライアス先生は何時に…」
メアリーにライアス先生の訪問時間を聞こうとしたその時、私の部屋の扉を誰かコンコンっとノックした。
もうライアス先生が来てしまったようだ。
「ヤバい!まだ何も準備してない!」
バっ!と勢いよくソファから立ち上がり、勉強に必要なものを片付けている机の方へ向かう。
ノートと教科書と参考書!
あと予習に使った資料をまとめノート!
慌ててそれらをまとめていると予想していた声とは違う声に後ろから声をかけられた。