悪女の代役ステラの逃走。〜逃げたいのに逃げられない!〜
「こちら守護の魔法薬でございます。右から順に効果が強くなっております。どの強さをお選びになりますか?」
すぐ側にあった小さなテーブルをこちらに近づけ、魔法使いが薬を並べていく。
俺は迷わず1番効果が強いと言われた魔法薬を指差した。
「これを」
「はい!かしこまりました!」
魔法使いは嬉しそうだ。いい商売ができたからだろう。
「それではユリウス様、守護石の方、失礼いたします」
「ああ」
魔法使いが丁寧に俺から守護石を受け取る。
そして魔法使いは先ほどまで並べていた魔法薬を片付けて、そこに魔法陣の描かれた紙を置いた。
その上にそっとステラからの守護石が置かれる。
「素敵な守護石ですね。漆黒と黄金、きっとユリウス様を想って選ばれたのでしょう」
魔法使いの言葉に俺はそうだろうと満足げに頷く。
ステラはあの時、とても真剣にこれを選んでくれた。
これを渡された時、俺は今までに感じたことのないほどの感動を覚えた。
俺の心はここまで感動で震えるのかと知ってしまった。
「私はユリウス様が小さな頃からユリウス様のことを知っております。ですからユリウス様をこんなにも想い、またユリウス様自身もお相手様のことを想っていらっしゃることがとてもとても嬉しいのです」
何故か感極まっている魔法使いに俺は1人首を傾げる。
確かにステラの想いには感動したが、俺を小さい頃から知っているというだけで赤の他人の魔法使いが感動するものなのか?
「私にこのような大事な役目を任せていただきありがとうございます。こちらの守護石が一生壊れることのないようにしっかりと守護の魔法を施しましょう」
魔法使いはそう言うと小瓶の蓋を開けた。
小瓶の中で揺れている水色の液体が小瓶から守護石にかけられる。
すると魔法陣が光だし、液体は魔法陣いっぱいに広がると光の粒に変わり、守護石の中に入っていった。
そして魔法陣の光は消えた。
光が消えたあとそこに残っていたのは、先ほどまで魔法陣が描かれていた白紙の紙とその上に置かれた守護石だけだった。