悪女の代役ステラの逃走。〜逃げたいのに逃げられない!〜
「はい。できましたよ。これで何があってもこの守護石は壊れません。私が保障いたします」
「そうか。ありがとう」
「いえいえ。これも仕事ですから」
魔法使いから守護石を受け取る。
俺の手の中に収まった守護石は先ほどと何も変わらないように見えるが、もうこの守護石が壊れることは今後ない。
俺は安心するとそれをやっと自身の耳に付けた。
昨日から本当はずっと付けたかったが、万が一壊れてはいけないので我慢していたのだ。
*****
魔法使いの店を出た後、俺はまっすぐ公爵邸に帰り、ステラの元へ向かった。
夕方の今の時間帯はステラはどうやら外の騎士団鍛錬場で剣術の稽古を受けているようだ。
先ほどステラの部屋へ向かう途中で偶然出会ったメアリーにそう教えてもらった。
「…はっ!」
カンッ!と大人の男を相手になかなか鋭い一発を入れているステラの姿が目に入る。
それをステラの剣術の先生であるヴィルが何とか受け止めるが、余裕のあるようには見えない。
その隙をステラは見逃さず、すぐに次の一手を講じていた。
剣術を習いたての12歳の少女には見えない動きだ。
ステラの動きに俺はどこか見覚えがあった。
誰の動きだっただろうか。
騎士団、学院の生徒、俺の知っている剣術ができる者の動きを思い浮かべてみる。