悪女の代役ステラの逃走。〜逃げたいのに逃げられない!〜





「何してるの?学院は?」

「もう終わった。ここにはお前に会いに来た」

「ふーん」



俺の答えを聞いてステラが怪訝そうな顔をする。
何故そんな顔をされなければならない。
会いたいのだから会いに来たでいいだろう。



「あ、それ」



ステラの視線が俺の耳に向けられる。
どうやら守護石に気がついたようだ。



「さっき魔法使いに一生壊れない魔法を施してもらった。これでこれはもう壊れないだろう」

「え」



自慢げにステラを見ればステラは何故かぽかーんと口を開けて固まっていた。
ステラは本当に表情豊かでいろいろな表情を見せてくれる。
それがとても面白いと俺はいつも思っていた。



「稽古を俺がつけてやろう。模擬戦でもどうだ」

「…マイペースか」

「ん?何か言ったか?」

「いや!ヴィル先生に聞いてみるよ!ヴィル先生がいいって言ったらやろう!模擬戦!」



何か呟いていたステラの声は聞こえなかったが、ステラは笑顔でそう言うとヴィルの元へ駆け出した。
そしてヴィルと少し話すと「模擬戦いいって!やろう!ユリウス!」と12歳の少女らしく無邪気にそう言った。

やはり裏で悪女と呼ばれるリタ嬢とステラはどこも似ていない。
きっと似ていると思ってしまうのも気のせいだろう。




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