悪女の代役ステラの逃走。〜逃げたいのに逃げられない!〜
第3章 皇太子様の気になる相手
1.想定外の遭遇
sideステラ
あの花祭りから2週間が経った。
私は未だにここフランドル公爵邸から出られそうにない。
ユリウスと過ごす時間も何故か増え、もちろん使用人や護衛騎士たちの監視の目もあり、今の状況では自分の力だけで逃げ出すことはほぼ不可能だった。
そんな私は今、フランドル公爵邸の花畑にいる。
本邸から少し離れたこの場所は本当にフランドル公爵邸内なのかと疑いたくなるほど自然豊かで美しい場所だ。
「ねぇ、メアリー」
「はい、何でしょう」
花畑で花冠を作りながら、私のそばに控えていたメアリーに声をかける。
「さっきここに来るまでに他のメイドたちが話していたのって…」
「ああ!その話でございますね!」
ここに来るまでにたまたま私が耳にしたある話。
その話の詳しい内容をメアリーから聞こうと私はメアリーに質問してみた。
メアリーがそんな私にっこりと笑う。
相変わらず愛らしいメアリーには背後に広がる花畑が本当によく似合っている。
「リタ様とロイ様のことでございますよね」
「うん」
そこから表情豊かなメアリーによってリタとロイの話が始まった。
約3ヶ月前、このミラディア帝国の皇太子ロイがルードヴィング伯爵家のリタと正式に婚約をした。
…代役である私の力によってだが。
ここ数ヶ月の帝国の話題の中心は婚約したての2人だ。
そしてここからが肝心なのだが、2人ともどうもここ数ヶ月様子がおかしいらしい。