悪女の代役ステラの逃走。〜逃げたいのに逃げられない!〜





「よーし。えいっ!」



それを空へ向かって目一杯投げる。

青空に色とりどりの花びらや花が舞っている。
その景色は鮮やかで可愛らしくいつまでも記憶に焼きつけたいと思えるものだった。

そんな素敵な花びらたちのシャワーを浴びながら私はその場でくるくると舞ってみる。
リタの代役の時に散々見た舞姫たちの真似だ。



「メアリー!歌って!」

「えぇ!?」



ここに足りないのは音楽だ、とメアリーに歌うことを頼むとメアリーはまさかそんなことを頼まれるとは思っていなかったようで心底驚いた表情を浮かべていた。



「きゅ、急にそんなこと言われましても!ど、どうすれば!」

「何でもいいよ!好きに歌って!」



全て落ち切ってしまった花びらたちを私は再び集める。
そしてメアリーが「わ、わかりました。では僭越ながら!歌います!」と恥ずかしそうに言ったところでもう一度思いっきり花びらたちを空へと投げた。

可愛らしいメアリーの歌に合わせて私はステップを踏む。
踊りなど社交ダンスくらいしかしたことはない。
なので決して上手いものではないだろうが私は別にそれでよかった。



「リタ」



突然聞き覚えのある柔らかい声に呼ばれた気がして思わず声の方へ振り向いてしまう。
するとそこにはこちらを驚いた表情で見ているロイがいた。



「…っ」



驚きたいのはこちらである。
何で公爵邸から離れたこんな場所に皇太子であるロイがいるのだ。
客人が迷い込むような場所ではないはずだ、ここは。




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