悪女の代役ステラの逃走。〜逃げたいのに逃げられない!〜
「リタにはバレてしまうんだね。少しね。妖精を見つけたのさ」
「…妖精?」
「ああ」
微笑む僕にリタが首を傾げるが僕はそれ以上は何も言わない。ただ微笑むだけだ。
「ピエール」
「はい」
「ここは宮殿だ。もう下がっていい」
「かしこまりました」
僕に下がるように言われてピエールが僕に一礼をし、さっさとその場から離れる。
ピエールが離れたことによってこの場には僕とリタしかいなくなった。
「ロイ様、今日の夕食は南の海の幸のフルコースと先ほどシェフが…」
「もう帰ってくれないか」
上機嫌に話し始めたリタに僕は冷たくそう言い放つ。
「君は暇なのかな?いつもいつも我が宮殿に来て。夕食まで君と取る気はないよ」
「…そ、そんなっ」
にっこりと笑う僕にリタが辛そうに表情を歪める。
やっぱり違う。
僕の愛したリタならこんなことを言われたくらいじゃこんな表情なんて浮かべない。僕と同じ笑顔で嫌味の一つでもさらりと言える人だったはずだ。