悪女の代役ステラの逃走。〜逃げたいのに逃げられない!〜
「…わ、私はロイ様の婚約者ですもの。宮殿にいるのは当然で、夕食だって…」
「君、最近学院にさえ行っていないそうだね。優秀者は免除制度を使えるとはいえ、完全に行かなくてもいい訳ではないことはもちろん理解しているよね?それなのに何故、行かないのかな?しかも皇后教育が忙しいからと嘘までついて」
「…う、嘘ではありませんわ。今日も皇后様自らご指導いただき…」
「母上が学院へ行けないほど君を拘束しているのかい?それならそれで問題だね。すぐに父上に…」
「ち、違いますわ!」
僕の笑顔だが、淡々とした物言いにリタは突然大きな声を出す。先ほどまで言い訳を連ねていたこの女が一体僕に何を言えるのやら。
「…も、申し訳ありませんでした。学院には行けるように努力いたしますわ」
「そう」
震えながらも頭を下げるリタに僕は冷たくそう言う。
そして笑顔を消して言葉を続けた。
「僕たちはあくまで契約関係だ。リタ、君は僕を退屈させない最高の隠れ蓑にならなければならない。それを君はできているのかな?」
「…努力いたしますわ」
リタが辛そうにしている。それを見ても僕は何とも思わなかった。僕の愛したリタではないからだ。
「きちんと契約を守れない場合はわかっているね?」
僕は冷たくそれだけ言うとリタに背を向けて歩き始めた。
「…あの女ならいいのにどうして私だとダメなの。絶対に見つけて殺してやる、ステラ」
リタが何か言っていたが、僕にはその声は届かなかった。