悪女の代役ステラの逃走。〜逃げたいのに逃げられない!〜
「…わかった。俺は行けれないが、メアリーとジャンを連れて行け。それからあと4人ほど護衛騎士を追加しよう」
「ワーイ。アリガトー」
やっと喋ったユリウスの言葉に若干引いてしまったが、私は棒読みで笑顔でユリウスにお礼を言った。
これで脱出計画の第一歩を踏み出せる!
*****
私の脱出計画に必要なもの。
それはフランドル公爵邸周辺の情報だ。
仮に私がフランドル公爵邸から脱出できた場合、最短で隣町ユランに移動する必要がある。
脱出に気がついた公爵邸の者から逃れる為にだ。
そこで私は考えた。
街へ買い物に行くふりをしてフランドル公爵邸周辺の情報を得ようと。
「うわぁ、あのお店可愛い」
可愛らしいお店に目を向けているふりをして、そのお店周辺の情報を目に焼き付ける。
店の横には薄暗い路地があるが、こちらから見ても特に荒れている様子はなく、清潔そうだ。
あの道は暗いだけで治安は悪くない、つまり逃走にうってつけの場所だろう。
「あのお店に寄りますか?」
私の右隣を歩いていたメアリーが私の様子に気づいてにっこりと微笑む。
「寄るならお申し付けください。まずは俺が安全確認をして参ります」
そして私の左隣を歩いていたジャンがお決まりのセリフを真顔で言った。
先ほどからこれなのだ。
私がどこかを見る度にメアリーが私に問いかけ、ジャンが安全確認をしようとする。
まあ、2人とも仕事だから仕方ないけど。
だが、私は何度も言うが素性の知れないただの子どもなのだ。
こんな貴族の、それも重鎮のような扱いはやめてもらいたい。
しかも私の後ろと前には護衛騎士が4人も控えていた。メアリー、ジャン、前後の護衛騎士で私についているのは合計10人だ。多すぎる。
ユリウスはメアリーとジャン以外は4人くらいと言っていたのに、いざ出かければ倍になっており、それはもう心底驚いたものだ。