悪女の代役ステラの逃走。〜逃げたいのに逃げられない!〜

4.関わりたくない人





メアリーとの言い争いの結果、私は何とかジャンから降ろしてもらえた。

メアリーは本当に過保護で油断も隙もない。
ジャンもジャンでメアリーの言うことを何の疑問もなしに聞きすぎだ。


街をいろいろと見て回ったところでさすがに何か買い物をしなければ不審がられると思い、私は適当に目に入った文房具屋に入った。
そしてそこで自分用のペンとノートとユリウス用の万年筆を買った。
ユリウスの万年筆はユリウスへのお土産だ。
今後も外出をする予定なのでユリウスの機嫌を取っておく為にも必要なものだろう。
…自分のお金ではなく、ユリウスからもらったお小遣いで買ったものだが。

いい物が買えた、とほくほくしながら私は文房具屋を出た。



「あっ。見てくださいっ。ステラ様っ」



私の隣で興奮気味にだが、小声でメアリーがそう言ってある場所に視線を向ける。
私はメアリーの視線を追って、メアリーと同じ場所に視線を向けた。



「あそこ。ロイ殿下ですよ。ロイ殿下直属の騎士団までいらっしゃいますよね?あれです、あれ。あれがこの前お話しした〝誰かを探す〟ロイ殿下です」



街の一角に似つかわしくない集団の中心にはメアリーが言った通り、ロイがいる。
ロイは騎士たちに囲まれて数人の18歳くらいの女性と何やら話をしているようだった。

確かに遠目から見ても誰かを探している雰囲気だ。



「…」



もう2度とロイとは関わりたくない。
そう思った私はロイに見つからないように気配を消してこっそりその場から立ち去ろうとした。
したのだが。




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