悪女の代役ステラの逃走。〜逃げたいのに逃げられない!〜
「仕事中だったよ。でも君に会えたんだ。であるならば君が優先されるべきだろう?」
「…」
いや、違うでしょ。
ロイの言動に呆れてしまい、言葉が出ない。
この男はいつもそうだった。相手が困るとわかっていながらおかしなことを口にする。
困っている相手を見るのが面白いのだ。
私のことも何故か気に入っているのでそうやって楽しんでいるのだろう。
「僕たちは友だちじゃないか?ねぇ?」
「そうですね」
同意を求めるロイに私はにっこりと笑った。
あまり嫌がるとかえってロイを喜ばせてしまう。
ここはあえて当たり障りのない対応をして、ロイを飽きさせてさっさと解散の流れにしてしまおう。
「君はいつからフランドル公爵邸の踊り子をしているんだい?」
「え。あ、ちょっと前からですかね」
「へぇ。じゃあ給料はいくらもらっているのかな?」
「…それは言えないです」
「そう。ならこんな話はどうかな?公爵邸より宮殿の方が倍の給料を支払おう。だから宮殿専属の踊り子にならないかい?」
「…難しいですね」
訂正するのも面倒くさいと思い、適当にロイの話に答えていると、話がとんでもない方向に流れてしまい、私は心の中で1人焦ってしまう。
いつの間にかフランドル公爵邸の踊り子になっているし、宮殿に引き抜かれそうになっているし、どうすればいいんだ。