悪女の代役ステラの逃走。〜逃げたいのに逃げられない!〜





「見つかりましたか」



聞き覚えのある落ち着いた声。
声の方へ視線を向ければそこにはリタの専属執事、セス・レイエス(19)とセスを囲むようにルードヴィングの私兵たちが立っていた。

私は慌ててセスたちからは見えない死角を探してジャンの後ろに隠れる。



「ここには例の者の情報はありませんでした」

「そうですか。わかりました。例の者が逃げて数ヶ月経ちましたが、国境記録によると帝国を出た者の中に例の者と同じ特徴の者はおりませんでした。近場で潜伏していると考えられます。徹底的に探しましょう」



夕日に照らされてキラキラと輝く色素の薄い白い後ろに一本にまとめられた長髪が風に吹かれてゆらゆらと揺れている。
男にしては美しすぎるセスの顔には疲れと憂いの色をがあった。
その特徴的な透き通った水色の瞳が街をじっと見つめている。

話の内容からして間違いなく私を探しているのだ。
セスたちは。



「あら。あちらはセス様ですね」



私の視線の先に気がついたのかメアリーが呑気にそんなことを言った。
そして私の気など知るはずもないので「セス様たちも誰かをお探しのようですね」と笑っていた。

その誰かとは私である。




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