悪女の代役ステラの逃走。〜逃げたいのに逃げられない!〜
「あ、あちらの方はリタ様の専属執事のセス様です。とても優秀な方で昨年の学院卒業生の中でも常に成績トップをキープしていたそうですよ。その優秀さとあの美貌でかなり人気な方なんです」
私がセスを気にしていると思ったのか、メアリーが私にセスの説明をしてくれる。
だが、私はメアリーに説明なんてされなくともセスのことはよく知っていた。
リタの代役を務めていたからだ。
セスは私、ステラにとって幼馴染のような存在だ。
8年前、リタの代役を務め始めた私と同時にセスはリタの専属執事として任命された。私とセスはほぼ同時期にリタの為に用意された子どもだった。
リタの代役は大変なこともたくさんあったし、時には悔しいことや不自由なこともあった。
それでも私が飄々としていられたのは同志であったセスがいたからだ。
セスは私の正体を知っており、唯一リタの代役ではなく、ステラとして私と接してくれた。2人でずっと頑張ってきた。
もう一度言うが、セスは私の幼馴染のような存在で私の正体を知っている。
きっとセスなら今の私を見て一発で私だと気がつくはずだ。
「例の者の動きなら大体把握しています。急に襲われたので慎重になっているはずです。同じ場所をもう一度です。思いもよらない方法で潜伏している可能性があります。それこそ魔法薬を使うなどして」
セスの的を得すぎている言葉に私は息をのむ。
潜伏していることも魔法薬を使っていることも予想されているとは。
これはますますセスに見つかるわけにはいかない。見つかればすぐに私だとバレて即殺されてしまう。
私は何とかセスたちの視界に入らないようにジャンやメアリー、周りの護衛騎士たちを上手く使ってその場から離れた。