悪女の代役ステラの逃走。〜逃げたいのに逃げられない!〜
「…力不足ではございますが、私なりに一生懸命やりたいと思います」
「おお、そうかそうか。ありがとう。楽しみにしているぞ」
内心では冷や汗ダラダラだが、何とか表向きの笑顔を作って陛下に微笑むと陛下は嬉しそうにルビーの瞳を細めた。
「…ところでステラ」
「はい」
「そなたは貴族出身ではないのか?」
「はい。貴族出身ではございません」
「そうか」
私の返事を聞いて陛下が1人何かを考え始める。
リタの代役の時に身についた貴族の所作が板につきすぎたのだろうか。
今の私は普通の子どもにしては違和感のある所作だったのかもしれない。
そう思いながら陛下の次の言葉を待っていると陛下はやっと口を開いた。
「いや、すまんな。どこかステラから懐かしさを感じてな。貴族出身なら会ったこともあるとも思ったが、そうではないようだな」
「…」
はは、明るく笑う陛下に背筋が凍る。
まさか直感で私がリタの代役だと感じているのではないのか。もしそうならば陛下の鋭さが怖すぎる。
「会いたかった、と思えてしまった。おかしな話だな」
ふわりと笑う陛下に私は完全に固まった。
この陛下、怖すぎる。
そんな私に気づいていないのか陛下は「ロイがそなたを気に入るのも頷ける」とただただ笑って納得していた。
ロイの鋭さも凄いが、やはり親である陛下の鋭さも凄すぎる。
怖い親子だ。