悪女の代役ステラの逃走。〜逃げたいのに逃げられない!〜
「…おーい。ステラ?」
美しすぎるロイに見惚れているとおかしそうに笑いながらロイが私の目の前で手を振った。
「あ、ああ。ありがとうございます」
私は何とか平静を装ってロイから離れる。
ロイなんかに見惚れて思考停止するなんて不覚。
「…どうしてロイ様がここにいるんですか?お仕事ですか?」
そして私は気を取り直してロイに質問をした。
するとロイは優しく私に微笑んだ。
「君が困っていると思ってね。助けに来たんだ。随分探したよ」
「…」
誰のせいで困っていると思っているんだ。
優しく微笑むロイのことを思わず恨みを込めて見てしまうがロイはどこ吹く風だ。
「私は踊り子じゃないって言いましたよね?」
「そうだね。でもステラも僕にこの前踊り子じゃないって否定しなかったよね?」
「…そうですけど。先ほどはちゃんと踊り子じゃないと言いました」
「それでも僕に先に嘘をついたのはステラだよね?この帝国の皇太子に嘘をついたのに僕を責められるのかな?ねぇ、ステラ?」
「…」
にこやかにだが、どこか意地悪く私に言葉を返し続けるロイに私は何も言えなくなる。
〝皇太子〟をチラつかされては私はもう何も言えない。素性の知れないただの子どもが〝皇太子〟に文句なんか言えるものか。
悔しさをグッと堪えてロイから視線を逸らすとロイは「ごめんごめん。ステラを責めにきた訳じゃないんだ」と優しく笑って私の頭を軽く撫でた。