悪女の代役ステラの逃走。〜逃げたいのに逃げられない!〜
「最初に言っただろう。助けに来たと。一緒に舞の内容考えよう」
「…え」
「ステラならできそうだと思う構成をもういくつか考えているんだ」
ロイはそこまで言うと驚きで目を見開いている私から本棚へ視線を移していくつか本を集め始める。
「僕は初めて君を見た時に花の妖精が現れたと思ったんだよね。だから今回の舞のコンセプトは花なんてどうかな?」
「…花ですか」
スッとロイから〝花の舞〟と書かれた本を渡される。
その本をぱらぱらとめくって内容をざっと確認してみるとそこには花をイメージした舞の型が絵付きで記されていた。
これを見て私の中でどんどんイメージが膨らむ。
「花だけでは動きが今ひとつです。蝶と戯れているとかどうでしょうか。花と蝶の戯れ、みたいな」
「なかなかいいね。ステラのような少女の幼さと無邪気さに合っているんじゃないかな。それじゃあ、あとこの本とこの本も持っていこう」
私からポロッと出てきたアイディアにロイがにこやかに頷く。
その後私たちはそうやっていろいろなアイディアをお互いに出し合いながら、図書館中を歩き回り、本を集め、本を集め終わると、その集めた本たちから具体的な構成を考え始めた。
そしてその話し合いは夕方まで続き、その頃には振り付けも使用する曲も演出でさえも全て決まっていた。
さすがロイだ。一緒に仕事をすればこんなにも早く完璧だなんて。
*****
「本当はまだステラといたいんだけどね。仕事があるからもう行かないといけないんだ。また明日も必ず会いにいくよ。最終調整をしよう」
舞の構成を全て決め終えた後、ロイは私にそう微笑んで私と何故か名残惜しそうに別れた。
それがたった数時間前の話である。
夕食を部屋で食べ終え、明日に備えて練習でも始めるか、と曲を流そうとしたところでロイはまた私の前に現れた。