冷酷検事は揺るがぬ愛で契約妻を双子ごと取り戻す

「……試着してみようかな」
「うん、絶対似合うよ~」

 店員に声をかけ、試着室でワンピースに着替える。壁の全身鏡を見ると、久々に新しい服を着た自分はいつもよりほんの少しだけ、かわいくなった……気がする。

 扉を開け、試着室の前で待ってくれていた梓にも一応お披露目した。

「いいじゃん! これで神馬さんはもっと琴里にメロメロだね」
「そうかなぁ」

 梓の手前恥ずかしくて首を傾げたけれど、最近の彼ならちゃんと褒めてくれる気はした。

 本物の婚約者のように振舞う練習はどんどんレベルが上がっていて、眠る前には必ず抱きしめられるし、唇以外のどこかにキスをされるくらいだから。

 ただし、本当は唇にしてほしいと思っているなんて……彼の前では絶対に言えない。

 検事としての彼を信用していいのかまだハッキリ答えが出せていないのに、そんな相手にキスしてほしいなんて、自分でもおかしい感情だって思うから。

「そうだ、これ買ったら下着も見に行こうよ! お泊まりなんでしょ?」
「えっ。いいよ別に……」

 梓の言う通り、彼が計画したのはデートというより一泊旅行だった。土日を使って東京から離れた温泉にでも行こうと誘われ、断る理由もないので承諾した。

 普段同じベッドで寝ていても手を出されないし、前に私の不注意を咎めるため『襲う』と宣言された時も、彼は結局後から謝ってくれたから、一泊旅行だからといってそこまでのことは想定していないのだけれど……。

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