冷酷検事は揺るがぬ愛で契約妻を双子ごと取り戻す
懐かしい部屋に到着すると、鍵を開けて中に入る。
私がいなくなったせいで、ゴミ屋敷みたいになってたりして。
少し不安に思いながら壁のスイッチで電気をつけたものの、室内の様子は引っ越し前とさほど変わっていなかった。
さすが弓弦。学校も家事もちゃんと両立してるんだな……。
途中のスーパーで買ってきた食材を冷蔵庫にしまい、肉のおかずと野菜のおかずをそれぞれ三品ずつ作って、保存容器に詰めた。
「これでよし。さて、弓弦が帰ってくる前に……」
キッチンを片付け終えた後、私が寝室として使っていた部屋へ向かう。目的は、一冊のファイルだ。
父の事件について書かれた当時の新聞や雑誌の切り抜き、傍聴した裁判の内容を記したメモなどをまとめてそこに保管してあった。
当時は繰り返し読んでいたけれど、ここ二年ほどは弟との生活を回すのに必死で、記憶が薄れてしまっている。だから、そこに鏡太郎さんの名前があったかどうか覚えていない。
担当検事は別の人だし、当時の彼は横浜地検にいたと聞いている。それでも、きちんとこの目で確かめたいのだ。
「あれ……? 私、確かここに……」
本棚の一番下、アルバムの隣に入れていたはずのファイルが見当たらない。
狭い部屋なので本棚はひとつだけだし、他の場所にしまったってこともないと思うのだけれど……。
弓弦が自分の部屋に持って行ったとか?