冷酷検事は揺るがぬ愛で契約妻を双子ごと取り戻す

 本棚の前で考えあぐねていると、ダイニングの方でスマホが鳴っていることに気づく。

 一旦部屋を出てテーブルに置いていたスマホを確認すると、登録外の番号からだった。非通知ではないにしろ、旅行の時に聞いたボイスチェンジャーの不気味な声が耳の奥に蘇って、出るのを躊躇ってしまう。

 しかし、市外局番から始まっているから固定電話のよう。ということは、変な電話ではない……?

「……はい」

 おそるおそる通話をタップして、スマホを耳に当てる。

『突然のご連絡失礼します。村雨琴里さんのお電話でお間違いでしょうか』

 ボイスチェンジャーじゃなかった……。

 聞こえてきたのはごく普通の女性の声で、張り詰めていた気持ちがフッと緩む。

「そうです」
『こちら、南天(なんてん)総合病院の整形外科からおかけしています。弟の村雨弓弦さんがバイクの事故に巻き込まれて治療中ですのでご連絡を――』

 病院?と訝しく思ったのも束の間、一瞬で血の気が引いた。

 弓弦が交通事故に? どうして……。

「お、弟の容体は……!?」
『ご安心ください。肘の打撲と擦過傷ですので、処置が済み次第帰宅できます。お姉さんには健康保険証とお会計のご準備、お帰りの際の付き添いをお願いしたいのですが』

 よかった……。事故と聞いた時は生きた心地がしなかったけれど、けがが軽く済んだのは不幸中の幸いだ。

「わかりました。すぐに伺います」

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