冷酷検事は揺るがぬ愛で契約妻を双子ごと取り戻す

「わかりました。彼との婚約は解消……父の事件についての協力関係も終わりにします」

 言葉にすると、胸がちぎれそうになった。

 他人の前で口にするだけでもこんなにつらいなら、本人に直接言うのは、もっと無理だ……。

 弓弦の怪我を看るという名目で別居したまま、アパートを引き払う準備ができたら手紙を書こう。

 私たち姉弟を支えてくれた感謝と……この胸に初めて生まれた、かけがえのない大切な気持ちのことを。

「舞鶴。しっかり録音したな?」
「ええ。この通りです」

 権藤の声掛けで、舞鶴さんがスマホを操作する。スピーカーから聞こえてきたのは、私自身の声だ。

『わかりました。彼との婚約は解消。協力関係も終わりにします』

 わざわざ録音しなくたって、撤回なんかしないのに……相手を追い詰めるためならどんな手でも使うのだ。

 脅して引き出した証言でも、平気で採用する。

 検事なんてやっぱり大嫌いだ。――私が愛したあの人以外は、みんな。


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