冷酷検事は揺るがぬ愛で契約妻を双子ごと取り戻す
「きみの選択肢はふたつある。ひとつは、先ほど威勢よく宣言したように、神馬の奴と一緒になって、巨大権力相手に無意味な争いを続ける。その場合、神馬の身の安全は保障できない。そしてもうひとつは――」
「鏡太郎さんと別れて、父の再審請求をあきらめる……ですか?」
「その通り。三流大学を中退している割には、頭が回るようだ。しかし、別れるだけではまだ足りないな。神馬に居場所を気取られないよう、姿を消してくれ」
権藤がわざとらしい拍手で私を小馬鹿にする。この男、私のプロフィールはすべて把握しているようだ。
悪党だとわかりきっている相手なのに、逆らえない。父の有罪判決も、この男が事実を捻じ曲げたに違いないのに……対抗する方法はすべて絶たれてしまった。
これ以上食い下がったら、鏡太郎さんが……。
彼がトラックに撥ねられそうになるシーンをつい想像してしまい、恐怖にギュッと身を竦める。
権藤の提示した選択肢は、もはやひとつしかないのと同じだった。
お父さん、お母さん、弓弦、鏡太郎さん……。
大切な人が傷つけられるのは、もうたくさんだ。