冷酷検事は揺るがぬ愛で契約妻を双子ごと取り戻す
「でも、時給三千円だし……」
自分に言い聞かせるように呟き、ティッシュの入ったプラスチックかごに手を入れる。それから勇気を出して、たまたまそばを通ったサラリーマン風の男性に笑顔を向けた。
実際に入店はしてもらえなくても、とりあえずティッシュを捌けばいいと言われている。いつまでも恥ずかしがってないで、さっさと配り終えてしまおう。
「お願いしまーす。プリティギルティでーす」
「……あ、ありがとう」
たまたまそばを通りかかった男性がティッシュを受け取ってくれた。四、五十代だろうか。サラリーマン風の眼鏡をかけた男性だ。
「よかったら、コーヒーでもお酒でも飲みに来てくださいね。そこのビルの七階です」
「ふうん……。お姉さんが接客してくれるの?」
ダメもとで誘ってみたら、意外にも食いついてくれた。体験入店とはいえ、仕事らしいことができてなんとなくうれしい。
「すみません、私は新人なのでここに立っているのが仕事なんです。でも、中では先輩方がたくさん待っていますよ」
「中の先輩たちも、そういう格好してるの?」
男性の視線が下の方に注がれている。ミニスカートから出ている脚を見られているのだと気づき、急に恥ずかしくなった。
この仕事をするなら慣れなきゃいけないんだろうけど、初対面の男性にじろじろ見られるのは気分のいいものではない。
「い、色んな衣装がありますよ。もちろん、私と同じ警察官の衣装を着た方も」
「そっかぁ、へぇ……。少しくらい、触ってもいいのかな?」
「えっ?」