冷酷検事は揺るがぬ愛で契約妻を双子ごと取り戻す
まさか〝触る〟という発想になるとは思わず、不快感がこみ上げた。
中にはそういうお店があるのかもしれないけれど、『プリティ☆ギルティ』は、あくまで飲食店だ。
店長に聞いた話では、コンカフェでお酌や同伴などの接待をするのは、風営法という法律で禁止されているらしい。
しかし、お客さんにしてみれば、コンカフェもキャバクラも大して変わらない認識なのかもしれない。
口ごもっていると、目の前の男性が突然私の手首をガシッと掴んできた。
「脚も綺麗だけど腕も細いね~。お姉さんになら、逮捕されたいなぁ」
「あ、あのっ。ですから私は新人というか、まだ、面接したばかりで……っ」
「うんうん。その慣れてない反応がいいよ。新人ってことはまだ固定客とかついてないんでしょ? 僕がお金を使って人気が出るようにしてあげる。同伴もできるの?」
掴まれている手首をすりすりと擦られて、肌が粟立つ。時給三千円のために耐えるべきなのだろうか。だとしたら、軽い気持ちで応募した自分が間違っていた。
怖くてたまらないのに、助けを求める相手もいない。
「いえ、ですからそういったサービスは無理で――」
震える声でなんとか男性を説得しようとしたその時、すぐ近くで足音がして、横を向いたら意外な人物がいた。
見上げるほどの長身、どこか冷たい印象の整った横顔。
夏だというのに汗ひとつかかずに高級そうなスーツを着こなしているその人は、東京地検の神馬検事だった。