冷酷検事は揺るがぬ愛で契約妻を双子ごと取り戻す

「琴里、そんなスパイみたいなことできるの? もしバレたりら大変なことにならない?」
「もちろん、バレないように最大限注意するよ」

 最初は弟のためという態度を崩さず、でも少しずつ彼が素顔を見せてくれるよう仕向ける。別に恋愛関係じゃなくても、部屋に入って掃除することくらい許されるよう程度の信頼が築ければいいだけだ。

「うーん、心配。だったら私もその検事さんに会わせてよ。危ない人かどうか、それで判断する。さすがにこのまま黙って琴里を差し出すなんてできないよ」
「梓……なんか、巻き込んじゃうみたいでゴメン」
「いいってそんなの。単にイケメンを拝みたいっていう不純な動機もあるんだから」

 こちらに気を遣わせないためだろう。梓は軽い調子で笑って、ひと切れのピザを口に入れる。

 梓は昔からそうなのだ。父の事件の後、ほとんどの友人が私の前から去ったのに、梓だけは当然のように私の味方でいてくれた。

 迷惑をかけてしまうと思って『ごめんね』と言っても、『なにが?』とケロッと言えるような人。本当に自慢の友人だ。

「ありがとう。弟にはさすがに相談できないから、梓に聞いてもらえてよかった」
「どういたしまして。ほら、冷めちゃうから琴里も食べよ。事件の真相を探るのも大事だけど、腹が減っては戦はできぬ。例の検事さんに負けないように英気を養わなきゃ」
「うん、そうだね」

 気を取り直して食事を再開させ、ようやくピザの美味しさに舌鼓を打つ。

 帰りがけに弟へのお土産にハーフサイズのピザを買い、神馬さんと話ができたらまた報告すると約束して、駅前で梓と別れた。

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