冷酷検事は揺るがぬ愛で契約妻を双子ごと取り戻す
普段食堂でしか会わない彼のプライベートの姿なんて知りようがないけれど、もしかしたら恋人の前では甘い顔とかするタイプだったりして。
だとしたら、絶対そんな自分を他人には知られたくないと思っていそう。
神馬さんの素顔……か。だったら逆に、こっちから探ってみるのはどうだろう。
「……もしも神馬さんが事件の裏に関わっているとしたら、偽物の婚約者として彼のそばにいるのもアリかもしれないよね」
「えっ? ちょっと琴里。なに言い出すの?」
梓が不安そうに私を見る。冗談だと思っているかもしれないけれど、結構本気だ。
父の事件について知ろうにも、一般人の私が触れられる情報なんてたかが知れている。
でも、神馬さんは検事で、かつあの事件について調べている。簡単には情報をくれるとは思えないけれど、彼は同居すると言っていた。
ひとつ屋根の下で二十四時間一緒にいれば、いつかは隙ができるのではないだろうか。
「お父さんを助けることに繋がるなら、私……あの人の話に乗ったフリをしてみようと思う。検察という組織を内側から探るの」
小さく息を吸って、そう宣言した。
いくら職場では偉そうにしている検事だって、家に帰れば普通の人。なにかしらの弱点が見浸かる可能性は高い。
同じ家に住んでいれば、彼のいない隙に部屋の中を調べることもできる。そこからなにかわかるかもしれない。