冷酷検事は揺るがぬ愛で契約妻を双子ごと取り戻す
『嘘を言ってどうする。もちろん、弟さんが今後そういうものに通いたいと思うなら相談に乗るし、援助もする。じゃあ、とりあえず時間の取れそうな日を取り急ぎ確認して折り返すから』
「は、はい。よろしくお願いします」
電話を切ると、気が抜けて背中からベッドに倒れる。
神馬さんにはなにかしらの腹黒い思惑があるはずなのに、普通に話しているとただの親切な恩人だと錯覚しそうになる。
だってさっきの話、明らかに私を励ましてくれてたよね……。むしろ、そうやって油断させるのが彼の策略?
しかし、彼は、父を陥れた検察組織の人間だ。たとえ裁判を担当していなくたって、私と弟が再審を目論んでいることは面倒事のひとつと捉えているだろう。
だからこうして妙な婚約を提案し、動向を探っているのだ。
「……こっちだってやられっぱなしじゃないんだから」
検事を出し抜くなんて、簡単なこととは思えない。
でも、婚約者として近くにいることで、彼や検察のほころびを見つける。その可能性に賭けてみようと思った。