冷酷検事は揺るがぬ愛で契約妻を双子ごと取り戻す

「大丈夫です。そういうの行かせる余裕なくて、いつも自宅学習なので……」

 塾・予備校・長期休暇の特別講習。来たる大学受験のために私も検討しなかったわけではないけれど、先立つものがなければ通わせられない。

 弓弦いわく、共働きのご両親がいる家庭でもそれらの費用を捻出するのには苦労するらしいから、我が家にはとうてい無理な話だった。

『きみの立場からすれば、できるだけ他の家庭と同じだけの教育を弟さんに与えたいという気持ちもわかる。しかし、自宅学習を真面目にしているのであれば、塾通いの生徒にそう劣らないだろう。負い目なんて感じる必要はない』

 ……神馬さんが慰めてくれるとは意外だ。でも、お金に困ったことのない人の言い分だと思うと、素直に受け止められない。

「弟は確かに真面目に勉強しています。でも、だからこそ塾に行けばもっと伸びるんじゃないかと思うと、歯痒いじゃないですか」
『それは塾を神格化しすぎだ。俺はそんなものには頼らず法学部に入ったし、検事になった。そういう例もあるんだから、きみは弟さんをもっと信じてやれ』
「えっ。ホントですか?」

 医者もそうだけど、検事や弁護士もお金のかかる手厚い教育を受けてようやくなれるものだというイメージがあったけど、私の偏見だったみたい。

 それとも、神馬さんが特別すごい人なだけ?

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