私の世界に現れた年下くん
他愛ない話をしながら駅近くの交差点に近づいてきた時。
少し先に、信号待ちをしてる村井先輩がいることに気づいた。
村井先輩だ。
どうしよう。
このまま歩いていったら、村井先輩のとこに辿り着いちゃう。
できれば避けたいな…
名倉くんも村井先輩も気づかないうちに。
「ね…今日、こっちから帰らない?」
普段、絶対に通らない道を指差すと、名倉くんが驚いた顔をした。
「え?こっち?」
「たまには違う道で帰るのもいいかなって」
無理やりすぎる言い訳をしてしまう。
それでも名倉くんは、いいですよと言ってくれ、私が指差した方へ曲がった。
けど、安心したのも束の間、
「さっき前にいたの、あの先輩ですよね?」
横から聞こえた問いかけに、ドキッとした。
名倉くん、気づいてたんだ…
「あ、あー…うんと、」
こういうとき、ほんとに頭が回らなくなる。
「たしかに、いたかも、」
わざとらしい返答をした私に、何を思ったのか名倉くんは、
「やっぱり、先輩のことが好きなんですか」
「え?」
「だから僕のこと、まだ考えられないってことですか?」
「え、あの、」
「もう少し待ってほしいっていうのもそういうことですか?」
「ち、違う、違うよ」
名倉くんから畳み掛けられるように聞かれて、慌てて否定した。
名倉くんが、今まで見たことない、すごく悲しそうな顔をしていて、思わず言葉を失ってしまう。
私が黙ってしまったのを見て、名倉くんが、ごめんなさい、と謝った。
「、謝らないで…」
名倉くんは悪くない。
私が曖昧にしか返事しなかったから。
先輩のこと気にしてること、何となく気づいておきながら、話さなかったから。
「名倉くん」
名前を呼ぶと、そっと顔を上げた。
「勘違いしてほしくないから、話させてほしい」
先輩のことを話すことが良いことかはわからない。
けど、名倉くんに誤解はされたくない。
公園に行き、ベンチに並んで座る。
「先輩のことなんだけど、」
「はい」
「確かに好きだった。でも、この前失恋しちゃったの」
「え…そうだったんですね」
名倉くんが目を丸くする。
「告白したんですか?」
「ううん、してない。する前に振られちゃった」
「する前に…」
「だから会うのがちょっと気まずくて、つい避けちゃうというか…。さっきもわざとらしく避けちゃって、逆に気にさせちゃったよね…ごめん」
「先輩のこと好きだから、僕と一緒にいるとこを見られたくないのかと思って…」
「そんな全然、そういうのじゃないよ」
ぶんぶんと首を横に振る。
「でも正直に言うと、先輩をもう好きじゃないのかは自分でもよく分からなくて、気持ちが迷子になってるんだよね」
「迷子…」
「うん、でもそれは、私の中で名倉くんの存在が大きいから迷子になってる部分もあって。だから、ほんとにちゃんと名倉くんのこと考えてるから、それは分かってほしいな」
さっきは伝えなかった、ほんとに正直な気持ちを、恐る恐る伝えた。
すると名倉くんは、はい、と頷いた。
「話してくれてありがとうございます」
「ううん、こちらこそ」
受け止めてくれたことに、ホッとする。
「僕、先輩に嫉妬しちゃってました」
「気にしてるんだろうなっていうのは、何となく気づいてた」
そう言うと、ほんとですか、と恥ずかしそうに笑った。
「でも、1年くらい好きだったら、吹っ切るのも時間かかりますよね。だからもう少し待ちます」
「ありが…」
ありがとうと言おうとして、ん?と止まる。
「私、そんな前から好きだったって話したっけ?」
話した記憶ないんだけど…
不思議に思っていたら、名倉くんがハッとした顔をした。
「名倉くん?」
「あ、えっと…すみません…」
「え、なんで謝るの?」
「実はその…僕も話してないことがあって…」
「え?」
「わざとじゃないんです、ただちょっと話しづらかったというか…」
え、なに?
もしかして、愛ちゃんから聞いてたとか…?
でもそしたら、私が失恋したことも聞いてるはず…
「川原先輩」
なんだろうと考えてると名前を呼ばれて。
「先輩が正直に話してくれたので、僕も話します」
少し先に、信号待ちをしてる村井先輩がいることに気づいた。
村井先輩だ。
どうしよう。
このまま歩いていったら、村井先輩のとこに辿り着いちゃう。
できれば避けたいな…
名倉くんも村井先輩も気づかないうちに。
「ね…今日、こっちから帰らない?」
普段、絶対に通らない道を指差すと、名倉くんが驚いた顔をした。
「え?こっち?」
「たまには違う道で帰るのもいいかなって」
無理やりすぎる言い訳をしてしまう。
それでも名倉くんは、いいですよと言ってくれ、私が指差した方へ曲がった。
けど、安心したのも束の間、
「さっき前にいたの、あの先輩ですよね?」
横から聞こえた問いかけに、ドキッとした。
名倉くん、気づいてたんだ…
「あ、あー…うんと、」
こういうとき、ほんとに頭が回らなくなる。
「たしかに、いたかも、」
わざとらしい返答をした私に、何を思ったのか名倉くんは、
「やっぱり、先輩のことが好きなんですか」
「え?」
「だから僕のこと、まだ考えられないってことですか?」
「え、あの、」
「もう少し待ってほしいっていうのもそういうことですか?」
「ち、違う、違うよ」
名倉くんから畳み掛けられるように聞かれて、慌てて否定した。
名倉くんが、今まで見たことない、すごく悲しそうな顔をしていて、思わず言葉を失ってしまう。
私が黙ってしまったのを見て、名倉くんが、ごめんなさい、と謝った。
「、謝らないで…」
名倉くんは悪くない。
私が曖昧にしか返事しなかったから。
先輩のこと気にしてること、何となく気づいておきながら、話さなかったから。
「名倉くん」
名前を呼ぶと、そっと顔を上げた。
「勘違いしてほしくないから、話させてほしい」
先輩のことを話すことが良いことかはわからない。
けど、名倉くんに誤解はされたくない。
公園に行き、ベンチに並んで座る。
「先輩のことなんだけど、」
「はい」
「確かに好きだった。でも、この前失恋しちゃったの」
「え…そうだったんですね」
名倉くんが目を丸くする。
「告白したんですか?」
「ううん、してない。する前に振られちゃった」
「する前に…」
「だから会うのがちょっと気まずくて、つい避けちゃうというか…。さっきもわざとらしく避けちゃって、逆に気にさせちゃったよね…ごめん」
「先輩のこと好きだから、僕と一緒にいるとこを見られたくないのかと思って…」
「そんな全然、そういうのじゃないよ」
ぶんぶんと首を横に振る。
「でも正直に言うと、先輩をもう好きじゃないのかは自分でもよく分からなくて、気持ちが迷子になってるんだよね」
「迷子…」
「うん、でもそれは、私の中で名倉くんの存在が大きいから迷子になってる部分もあって。だから、ほんとにちゃんと名倉くんのこと考えてるから、それは分かってほしいな」
さっきは伝えなかった、ほんとに正直な気持ちを、恐る恐る伝えた。
すると名倉くんは、はい、と頷いた。
「話してくれてありがとうございます」
「ううん、こちらこそ」
受け止めてくれたことに、ホッとする。
「僕、先輩に嫉妬しちゃってました」
「気にしてるんだろうなっていうのは、何となく気づいてた」
そう言うと、ほんとですか、と恥ずかしそうに笑った。
「でも、1年くらい好きだったら、吹っ切るのも時間かかりますよね。だからもう少し待ちます」
「ありが…」
ありがとうと言おうとして、ん?と止まる。
「私、そんな前から好きだったって話したっけ?」
話した記憶ないんだけど…
不思議に思っていたら、名倉くんがハッとした顔をした。
「名倉くん?」
「あ、えっと…すみません…」
「え、なんで謝るの?」
「実はその…僕も話してないことがあって…」
「え?」
「わざとじゃないんです、ただちょっと話しづらかったというか…」
え、なに?
もしかして、愛ちゃんから聞いてたとか…?
でもそしたら、私が失恋したことも聞いてるはず…
「川原先輩」
なんだろうと考えてると名前を呼ばれて。
「先輩が正直に話してくれたので、僕も話します」