私の世界に現れた年下くん
思い切り否定した名倉くん。
「たしかに、ちょっと避けちゃってました。でもそれは川原先輩のせいではなくて、僕が勝手に、嫌われたくなくて色々考えすぎちゃってたせいです」
「嫌われたくない…って私に?」
「はい」
「え…え、どういうこと?」
名倉くんを嫌いになる要素なんてないのに…
「この前、川原先輩のこと、すごい困らせちゃったから、話さない方がよかったかもって後悔したんです。
嫌われたらどうしようとか、会ったらどんな顔すればいいんだろうとか色々考えちゃって。そしたらなんか…気づいたら避けちゃってました」
名倉くんは、すみませんと頭を下げた。
「そうだったんだ…」
「はい、」
避けられてた理由が全く想像してなかったことで、びっくりする。
でも、私がきっとそう思わせちゃってたんだよね。
「名倉くん」
「はい」
「私ね、名倉くんの話聞けてよかったって思ってるよ」
「…ほんとですか」
「うん。すごくびっくりしたけど、同じくらいすごく嬉しかった。自分が誰かの力になれるなんて思ってもなかったから」
「名倉くんにとってそんな存在になれてるんだって嬉しかった。でもね、私にとって名倉くんも同じなんだよ」
「僕も同じ?」
「名倉くんと出会って気づいたことがたくさんあるの」
首を傾げる名倉くんに、うんと頷く。
「村井先輩といた時の私は、ちょっと無理してたこと。でも名倉くんといる時は純粋に楽しくて、そのままの自分でいられること」
そして、
「それがどんなに特別かってこと」
ちゃんと伝えなきゃ。
名倉くんの目をまっすぐ見て、息を吸う。
「私、名倉くんが好き」
もう一度、丁寧に、「名倉くんが好きです」と伝えた。
すると、びっくりしたように目を丸くしたと思ったら、たちまち笑顔に変わっていって。
「僕も、川原先輩が好きです」
名倉くんは、そう返してくれた。
「ありがとう」
「こちらこそ、ありがとうございます」
お礼を言いながら、ハッと何かに気づいたように顔を上げた名倉くん。
どうしたんだろうと思ったら、
「僕と付き合ってください!」
まっすぐな言葉が胸に飛び込んできて、思わず、ふふっと笑ってしまう。
「川原先輩?」
「あ、ごめん笑って」
私は背筋を伸ばして、よろしくお願いしますと応えた。


