大好きな君と、初恋の続きを
 ……それ以来、私は新涼くんを避け、彼も話しかけてくることはなくなった。やっぱりこれまでのことはすべて虚像だったのだと思い、彼をシャットアウトして勉強に没頭した。

 少なからずあった憎い気持ちは徐々に消え、寂しさだけが残る。大学受験を終えほっとひと息ついて、彼との優しい思い出がふいに蘇ってきた時に、ようやくぼろぼろと涙が出てきた。

 私の初恋は、その時点で終わったのだ。──終わったと、思っていた。

 でも、キスを拒絶した時の、悲しそうな顔をずっと忘れられなかった。こうやって話している今も、この人は本当に私を利用するような薄情な人だろうかと考えが揺らぐ。もしかしたらあの時は、すれ違っていただけなんじゃないかって。

「芦ヶ谷だけは特別だった。俺にとっては」

 真剣な眼差しと言葉に射抜かれ、胸の奥でなにかが疼き出す。あなたにとって、私はどうでもいい存在なんだろうと思っていたのに……。

 彼から目を逸らせない私の頭の中に、真っ黒なゲームオーバーの画面が表示される。

▶CONTINUE(コンティニュー)
 END(ゲーム終了)

 八年前、絶対に選べなかったその選択を、今するべきなのかもしれない。


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