一途な消防士は、初恋の妻を激愛で包み込む
関宮先輩の自宅に戻ってきても。
彼は私を、絶対に離さなかった。
恋人ですらないのにこうもベタベタされると、自分が母カンガルーのポケットで養育される子どもにでもなったみたいだ。
好意を抱いている人に抱きしめられる経験なんて、二度と体験できないと思っていたのに……。
関宮先輩は恥ずかしげもなく堂々と私に接してくるせいで、調子が狂ってしまう。
ーー忘れてはいけない。
成り行きで同居することになっただけ。
このぬくもりを独占するために彼を求めたところで、いつか必ず妹の手によって。
この幸せは、破壊されてしまうのだと……。
「あー、ほんとだ。俺と星奈さん、バッチリ映ってる」
彼の腕の中で、感傷に浸っていれば。
リビングに置かれたテレビのスイッチを入れた関宮先輩は、ニュース番組を確認する。
その映像を暫く見つめていた彼は、感心した声を上げた。
『本日早朝、都内某所にて大規模なマンション火災が起きました。この火事で男女合わせて5名が軽症をーー』
火の勢いが強かった割に死傷者が出ずに済んだのは、消防隊員の懸命な救助活動のおかげだ。
私は関宮先輩を誇りに思うと同時に、不安になった。