一途な消防士は、初恋の妻を激愛で包み込む
「このまま、俺だけのものになってよ」

 私は耳元で囁かれた言葉を、無視した。
 そうしないと、今すぐにでも。
 好きと言う言葉を、口にしてしまいそうだったから……。

「星奈さん。ねぇ、聞いてる?」
「関宮先輩は、私に言いました。見返りを求めないと」
「そうだけど……」
「約束は、守ってください」
「だって、星奈さんが俺にデレたから。今ならいけるかなって。駄目だった?」
「いいも悪いもありません。あんまりうるさいと、出ていきますよ」
「残念」

 私の返答を耳にした彼は、これ以上しつこくしたら本当に出ていってしまうと危惧したようだ。

「夕飯、何食べる?」

 何事もなかったように話題を提供された私は、当たり障りのない返答をして彼とともに夕飯を食べた。
< 102 / 185 >

この作品をシェア

pagetop