一途な消防士は、初恋の妻を激愛で包み込む
「相変わらずの、鉄壁ガードだね」

 あの子と交流のある人物が偶然通りかかり、私と彼の仲が良さそうな姿を目にしたらと思うだけでも恐ろしい。

 心をときめかせているなどと態度に示したら、一環の終わりだ。

「そう言うところが、俺の負けず嫌いに火をつけているわけだけど」

 ーー関宮先輩だけは、絶対あの子に奪われたくない。

 そう、思っているからこそ。
 私は心を殺して、彼の言葉をスルーした。

「まぁ、いいや。ちょっと待ってて。書類、受け取ってくる」
「……はい。よろしくお願いします……」

 彼に対して最悪としか言いようのない態度を取っていたとしても。
 気まずい沈黙が長く続かないと、高校時代からの付き合いがあればよくわかっている。

 関宮先輩は私が本当に嫌がるようなことだけは、絶対にしないから……。

 気持ちを切り替えた関宮先輩を送り出した私は、相変わらずやる気のない声とともに外を走るオレンジ色の作業服を身に着けた消防隊員達を、遠くから見学しようとしてーー。
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