一途な消防士は、初恋の妻を激愛で包み込む
「ここでもよく、宇多見の話をしてくれるんすよ!」

 嬉しいことがあるとニコニコ、嫌なことがあればイライラ。
 青垣くん曰く。最近の彼は、すごくわかりやすく感情を表に出すようになったらしい。

 勤務中は硬い表情でだんまりを決め込んでいる光景が多いからか。

 何を考えているかわからないと部下に恐れられていたが、私が彼と再会し言葉を交わすようになってからは、好感度が鰻登りのようだ。

 関宮先輩の口からは、職場でどんなふうに生活しているのかなんて。
 聞こうとも思ってもみなかったから……。
 私の知らない彼を垣間見れた嬉しさを抱くと同時に、後ろめたい気持ちで心がいっぱいになる。

「小隊長にとって宇多見は、世界のすべてをなんすよ」

 関宮先輩が私を溺愛しているのは、青垣くんから見ても明らかなようで……。

 ーー見てみぬふりをしているままでは双方が不幸になるだけだと言う現実を、突きつけられたような気がした。

『一週間で、俺なしではいられない身体にしてあげる』

 その宣言通り、さっそく外堀を埋められてしまった。
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