一途な消防士は、初恋の妻を激愛で包み込む
「何しに来たの」
「えーっと……。忘れ物を取りに来たら、偶然? 宇多見を見つけたんすよ!」
「そう」
「それじゃ、オレはこれで! お幸せに!」

 私達は祝福の言葉をかけられるような関係では、ないのに……。
 口数が少なくなった関宮先輩に恐れを抱いた青垣くんは、脱兎のごとく逃走した。
 
「り災証明書、もらってきた。次、行こう」

 深いため息を溢して気持ちを切り替えた彼は苛立った様子でそう冷たく言い放つと、私の手を引いて歩き出す。

 これ以上関宮先輩を怒らせたら、面倒なことになる。
 だんまりを決め込み、半場引きづられるようにして。
 着いて行くしかなかったのだが……。

「青垣に、なんか言われた?」

 彼から不安そうに問いかけられた私は、首を左右に振って否定した。

「ほんとに? 変なことを聞かれたなら、ちゃんと言って。俺が星奈さんの代わりに、あいつを叱りつけておくから」

 あなたがこうして私に話しかけてくる方がよっぽど不愉快です、と。

 そう冷たく言い放たなければならないのにーー。
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