一途な消防士は、初恋の妻を激愛で包み込む
「青垣くんとは、挨拶程度の会話しかしていません」

 妹のいない場所で必要以上に彼を傷つける必要があるのだろうかと悩んだ結果、この場は感情を込めずに淡々と告げるだけに留めた。

「そう。星奈さんがそう言うなら、いいけど……」

 青垣くんに現実を突きつけられたとこの場で白状しなければ、これ以上問題が大きくなることはないのだから。

 いつものように、私が耐えればいいだけ。
 大丈夫。相手が妹じゃなければ、私は一人でも耐えられる……。
 そう、思うから。

 含みのある視線と言葉から逃れるように前を向いた私は、市役所に向けて関宮先輩と手を繋いだまま歩き続けた。

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