一途な消防士は、初恋の妻を激愛で包み込む
「や、やっと終わった……」
市役所で住民票と健康保険証の取得、印鑑登録の再設定。
運転免許証や通帳の再発行、郵便局で郵便物の転送依頼、スマートフォンの機種変更手続き――。
昼休憩を挟んだ以外は休み、なくあちこち回ったせいだろう。
これから歩いて関宮先輩の自宅に帰るなど、とてもじゃないが考えられないほどに疲弊していた。
「星奈さん、大丈夫?」
そんな私の背中を擦る彼は、まったく疲労した様子を見せずピンピンしている。
思わずなんで普通にしていられるのかと目線で訴えかければ、涼しい顔をした関宮先輩からなんてことのない口調で理由が紡がれる。
「俺はほら、鍛えているから」
私はどうやら、この程度なら余裕だと自分を過大評価しすぎていたらしい。
「体力おばけ……」
思わずそんな言葉が、ポツリと口から飛び出てきてしまうほど。
私は関宮先輩に対して、畏敬の念を抱いているのに気づく。
ーー純粋に、羨ましかった。
彼はフィジカルだけではなく、メンタルまで鍛え抜かれている。
それは私が何度も彼の好意を突っぱねても諦めることなく愛を囁く様子から、明らかだった。