一途な消防士は、初恋の妻を激愛で包み込む
 やっと彼を心の底から信頼できるようになった私は、勇気を振り絞り。
 ずっと言えなかった関宮先輩への想いを打ち明けようと、告白を試みる。

「関宮先輩……。私は、」

 ずっと、あなたのことが好きでした。
 素直な気持ちを伝えようとしたその言葉は、最後まで声にはならなかった。

「あれ? お姉と……香月?」

 ――私だけが幸せになるのは許さないと、あの子が香月先輩を奪いにやってきたからだ。

「は、陽日、さ……っ」

 妹は偶然を装い、私達に声をかけてきた。
 姉が妹に怯えるなんて、異常でしかないとわかっているのに。

 大好きな人を奪われるかもしれないと言う恐怖が全身に回ったせいで、自分の意志とは関係なく身体が小刻みに震えてしまう。

「星奈さん」

 なんでこんなところに、あの子がいるの。

 私を部屋に閉じ込めてーー火災が起きても助けようとせず、自分一人だけ逃げ伸びたくせに! 

「落ち着いて。大丈夫だから」

 怒鳴りつけてやりたい気持ちと、彼女に対する恐怖が入り混じる。
 怒りと畏怖から逃れられない私を不安そうに見つめた関宮先輩は、妹から私の姿が見えないように背中へ隠した。
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