一途な消防士は、初恋の妻を激愛で包み込む
「よかったぁ。連絡が取れないから、心配したんだよ!」

 関宮先輩に好かれたいからだろう。
 あの子は満面の笑みを浮かべて私を心配する素振りを見せたが……。
 それが本心ではないと、私だけが知っている。

「マンションがあんなことになっても、生きてるなんてぇ。お姉ってば、ほんとに豪運!」

 ーー甘い言葉に、騙されてはいけない。

 家族は私にとって、すべてを奪い去る悪魔だ。
 信じられるのは自分だけ。
 頼れる人なんていない。

「さすがは、あたしのお姉ね!」

 そう、思っていたのにーー。

「これからも姉妹二人で、カフェを切り盛りして行こう?」
「ーーなんで?」

 関宮先輩はいつだって、私を助けてくれる。

「え……?」

 何を言われたのかよくわかっていない妹が、気の抜けた声を出せば。
 関宮先輩は背筋が凍るような冷たい声で、淡々と告げる。
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