一途な消防士は、初恋の妻を激愛で包み込む
 関宮先輩が妹に静かな怒りを向けているのも、全部私が言いたいことを自分で言えないせいだと。

「それってほんとに、お姉の本心なの?」

 妹の口から紡がれた言葉は、私の心臓を抉る。
 口調こそ不思議そうにしているが、その瞳には私に伝えたい本心が見え隠れしていた。

『あたしから離れられると、本気で思ってんの?』

 妹の手から逃れようとするたびに、私はたくさんのものを奪われた。
 無機物を破壊されるだけならまだいい。

 他人に嫌われるのだけは、何度経験しても慣れなくて。

 私は心を閉ざし、大事なものを作らなくなった。

「私、は……」

 震える声でどうにか絞り出した言葉が、不自然に止まった。

 ーー今ならまだ、撤回できる。

 作り笑顔を浮かべて冗談だと言うだけで、妹の機嫌は直るだろう。
 いつも通り、私だけが我慢すればいいだけ。

 香月先輩を諦めれば、それで終わるはずなのにーー。

「う……」

 どうしても私は、その先の言葉を紡げなかった。
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