一途な消防士は、初恋の妻を激愛で包み込む
 ――私は恐ろしくて堪らない。

「あの子は私のほしいものを、すべて手に入れました」

 ――天使のふりをした悪魔。

「関宮先輩に好意を見せたら、きっとあの子はあなたを欲しがります」

 それが同い年で、種違いの姉妹。

「他のものであれば、諦めがつきました。でも……」

 宇多見 陽日を一言で言い表すのに、相応しい表現だった。

「関宮先輩だけは、陽日さんに奪われたくなかった……」

 できるだけ淡々と、事実だけを述べるつもりだったのに。
 感情を押し殺しきれず、含みのある言い方をしてしまった。

 ーーこの先に続く言葉を紡いで、本当にいいのだろうか? 

 私は何度も逡巡を繰り返し、長い時間を掛けて思案した。

 ーーこの気持ちを言葉に出したら。

 最悪の場合、関宮先輩に嫌われてしまうかもしれない。
 それが怖くて続きを紡げない私に、話しかけることなく。
 彼はじっと心配そうな顔をしながら私を見つめ、待っていてくれた。
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