一途な消防士は、初恋の妻を激愛で包み込む
「都合のいい時だけ、利用してる……」

 絞り出すように紡ぎ出された内容を耳にした関宮先輩は、深いため息とともに呆れた声を出す。
 私は何を言われるんだろうかと、身構えたが……。すぐにそれが、取越苦労であったと気づく。

「なんだ。そんなこと」
「だ、大事なことです!」

 私は思わず食ってかかってしまったことを、すぐに後悔した。
 今までどおり、だんまりを決め込んでおくべきだったのだ。
 顔を真っ赤にして反論すれば、関宮先輩は空いている手で私の頭を優しく撫でつけた。

「そんなこと、気にしなくていいから」
「ですが……っ!」
「俺は絶対に、あの女のものにはならない」
「本当、ですか……?」
「命を賭けて誓うよ。だから、少しでいいから。俺のこと、信じて」

 そこまで言われたら、突っぱねるわけにはいかない。
 私はこくりと頷き、彼から逃げようとするのを止めた。
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