一途な消防士は、初恋の妻を激愛で包み込む
「そっか……。残念だなぁ。ここのカツサンドが一番好きなのに」
「ほんとに、ごめんなさぁい。また今度、食べてください!」
「そうするよ。じゃあ、今日はコーヒーをもらおうかな?」
「かしこまりましたー!」

 明るく元気な声と笑顔で男性客に応対した妹が、厨房に向かってやってくる。
 彼女は私の姿を目にした瞬間。
 貼りつけた笑顔を凍らせて、こちらを睨みつけてきたけれどーー。

「お姉……っ!」
「私に食ってかかるより、ドリンクの提供を優先してください」
「い、言われなくても! わかってるんだから!」

 私の指摘を受けた妹は顔を真っ赤にしながら大声で叫ぶと、馴れた手付きでコーヒーマシンを操作する。
 その後、コーヒーカップに茶色い液体を注いだ。

 ーー料理は壊滅的なのに、どうしてドリンクだけは美味しく入れられるのか……。

 長年不思議で堪らなかったが、ボタンを押すだけの簡単作業であれば誰にだってできる。
< 132 / 185 >

この作品をシェア

pagetop